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「作曲とプログラミングに共通するのは、理屈の部分の面白さ。」高良さん 広野さんインタビュー 前編

プロフィール

【エミリーエンジニア】を通じて案件に参画されている高良さんと広野さん。 現在も稼働中のお二人に、フリーランスのメリットデメリットや、続ける秘訣、向き不向きなど、フリーエンジニアの実態を赤裸々に語っていただきました。 

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自己紹介

──まずはお一人ずつ自己紹介をお願いします。

高良:高良と申します。27歳まで作曲家をやっていて、そこからエンジニアに転身しようと専門学校へ通いました。エンジニアとしては、正社員として海外向けのECサービスの会社に入社したところからスタートしました。1年半くらい働き、その後フリーランスとして独立し1年半くらいです。

得意領域は、WEBのフロントエンドやスマホ向けネイティブアプリ開発です。今の現場ではReact Nativeを触っています。自分のプロジェクトではSwiftが多いです。今までの開発実績は、HTMLやCSS、JavaScript、PHP、Kotlinなどです。

広野:広野と申します。偶然ですが、僕も27歳まで音楽家を目指してフリーターでした。そこから奇跡的にiPhoneアプリを作っている小さなベンチャー企業にエンジニア枠で採用され、今に至ります。エンジニアとしてはもう9年目で、フリーランスになってからは4年弱くらいだと思います。関わってきた会社の数は結構多いなと思っていて、フリーランスになってからは今の会社で7社目くらいですかね。並行して2〜3社のお手伝いをしている時期もありました。

エンジニアとしては一応フルスタックといいますか、一通りやったなという感じです。最初のキャリアはゲームエンジンのUnityを使ったモバイル向けのゲーム開発からスタートしました。でもバックエンドもやりますし、ブラウザのアプリケーション開発や、最近はハイブリットな環境でのデスクトップアプリ開発もさせていただいています。

フリーランスになったきっかけ

──作曲のお話も後でぜひお聞かせください。まずはフリーランスになったきっかけを教えていただけますか。

高良:もともと従うのが苦手な人間だったので、自由に活動したいと考えていました。そんな時に「景気とかを考えたら今がなり時だよ」と知人に言われ、一歩踏み出しました。

広野:僕も高良さんと一緒で、大きな組織で歯車として働くのは向かないと小さい時から思っていました。

最初に入ったベンチャーがとある上場企業に買収され、(結果として)大企業で働くことになり、「これは向いていないな」と肌身で感じました。1年ほど働いた後、知り合いに誘われて会社の立ち上げに関わりましたが、僕の能力不足もありあまり上手くいきませんでした。その会社で一緒に立ち上げに関わっていたエンジニアがフリーランス5〜6年目の方で、隣にロールモデルがいたので、「フリーランスやれるな」と思い、僕もやりだした感じです。

──とはいえ、なろうと思ってなれるものなんでしょうか?

広野:まあそこは、エミリーエンジニアのエージェントさんがいろいろやってくれるので、僕らはもう何の不安もなく働いていればいいって感じです(笑)

フリーランスのメリットとデメリット

──フリーエンジニアという働き方は、メリットもあればデメリットもありますよね。

高良: 金額も納期も自分で決めることができるというのが、フリーランスと会社員の一番の違いだと感じています。週5日間この時間で行かなきゃいけないというのとはずいぶん違いますね。自分の裁量で決めることができるのは大きなメリットかな。

ただ、失敗したときは自分がすべての責任を負わなければならないというところは、やっぱり怖いですね。

──経験を積んだ今でも怖いと感じるときはありますか?

高良:思う時はあります。ただ、今はエージェントを通させてもらっているので、契約面などの怖さはだいぶなくなりました!

──広野さんはいかがですか?

広野:やっぱり向き不向きが大きいなと。フリーランスになってみて、自分はすごく向いてるとこの3年間ずっと思っています。

高良さんもおっしゃっていましたけど、自分で決められるというのが一番のメリットです。組織に属していると自分の価値を評価者が決めることになり、評価者と上手くコミュニケーションをとることが重要になりますが、僕のメンタル的には、それがちょっと耐えられないなと。

フリーランスは自分のバリューとは何かを自分で整理して、それとマッチしている人とお仕事できる働き方だと思っています。なので、余計な心配をしなくてよくなったというのは、今すごく感じているメリットです。

デメリットはそういう意味だと今はほぼ感じていないです。労働市場的にも今エンジニアが売り手で、お仕事をたくさんいただけていますし。この3年間ずっと、エージェントさんに実務以外の部分をよしなにお任せしていて、ただただソースコードだけ書いてればよいっていう環境を保てているのも大きいです。

もし僕や高良さんのような気質の持ち主なら、ならない理由はないなって思います。

フリーエンジニアに向いている気質とは?

──気質というと、組織の中にいるのが向かないといったことでしょうか? それとも自由人的な意味合いですか?

広野:僕の場合、自由にやりたいというよりは、作っているものがちゃんとユーザーにとって一番価値のある状態にしたい。そのための努力は惜しむつもりもないですし、そういうディスカッションをずっとやっていたいと思うタイプです。

でも、組織の中ではどうしてもヒエラルキーに沿った、ユーザーへの価値は関係ないゲームのルールが入ってきてしまうんです。上のレイヤーの人が求めている「空気を読んでやっていかなきゃいけない」みたいなのが、僕の能力ではちょっとこなしきれないと感じていました。

高良:ヒエラルキーは感じますよね。

広野:みんな自分のバリューを出そうと頑張っているんですよね。でも、そうすると「このプロダクトって何のために?」というところが抜け落ちることがあったり。

あとゲーム業界では、本当に正解のない世界で「この人が面白いって言ってるのものは面白い」みたいな雰囲気があります。理屈のない中で進んでいかなきゃいけないのも、ちょっと僕には肌に合わなかったなっていうのもあります。

フリーランスを長く続ける秘訣

──フリーエンジニアとして長くやっていく秘訣や、心構えはありますか?

高良:一つは責任感かなと思います。何かをやりきるというか、自分で受けてそれをちゃんとやるっていうところ。普通の会社員の方でも責任感は必要ではあるのですが、フリーランスの方がより重要になります。

──求められることも普通の会社員とは違う部分はありますよね。より即戦力を期待されたり、結果を厳しく求められたりということは感じますか?

高良:請負の場合、「最初から最後まで責任持ってやってね」という世界ですよね。期限も決められていて、間に合わなければ他の人に頼むとかも自分の裁量でやらなきゃいけない。会社にいたころだと「期限伸ばしてください」と上司に言えば何とかなったりしていたので全然違いますよね。

広野:そうですね。求められてるものを正しくこなすというのは絶対にやらなければいけない。そこの責任感は重要ですね。

あとは、求めてるものって何かをちゃんと引き出すのが、安定してバリューを出し続ける秘訣と思っています。面談のときのジョブディスクリプションに書いてあることって、ただのチェックリストにすぎないですよね。本当は、もっと「こういうフェーズで」、「こういうメンバーがいるから」、「こういうタイプの人がいたらいいな」とかあるはずです。それをクライアントから引き出せないと、技術要素的にはハマっていも、結局、今のフェーズではバリュー出せないねとなることもあります。求められているものを事前に引き出すっていうのは、お互いにとって一番ハッピーだと思いますし、自分も安心して働けるんですよね。

また、定期的に確認し続けることも大事です。相手が求めていることもどんどん変化していくはずですし、その変化にも対応していきたい、バリュー出していきたいと思っていますが、外れてしまうこともあるので。

「自分のバリューと向こうが求めてるバリューってなんだっけ?」というコミュニケーションをまめにとることを心がけてはいますね。

フリーランスに向かない人とは?

──逆に、こういう人は向かないという人物像はありますか?

広野: 未来のことをちゃんと考えちゃう人は向いてない気がしますね。10年後とかの人生設計みたいなところをイメージしきれないと不安になっちゃう人は、やっていて辛くなってしまう気がします。

僕は、2年後の自分を考えるというのがストレス以外の何物でもなくて。今楽しいことだけをやるっていうところにフォーカスし続けている人生だったので、そういう意味で向いていると思っています。

高良:安定を求める人ってこと?

広野:まあ少なくとも向こう1年~2年は、僕ら売り手市場だし、エージェントさんもこんなに頑張ってくれているので、まあ大丈夫でしょう、みたいなプラスのイメージを持てているという感じです。でも10年後がどうかは、何もわからないですよね。10年後が心配になるなら、確実な会社で働く方が向いているとは思うんですよね。

──確かに、あまりに保守的な人には向かないかもしれないですね。

高良:従うのが好きな人と言いますか、命令を待っている人には厳しい働き方かもしれないですね。指示待ちの人とかだと向かないかなって思います。

広野:能力的に続かないということではなくて、「自分が価値出してないな」と思った瞬間にやっていけなくなっちゃうと思います。自分で自分の価値を定義するというサイクルとか方法論を持っていないと、誰かに頼ることになってしまいますよね。その結果、心が辛くなってしまうかなというイメージがあります。

フリーエンジニアの休日の過ごし方

趣味は「数学」?

──話を変えて、お二人のプライベートについても教えてください。休日はどんなふうに過ごされていますか?

広野:業務がない日は自分のプロダクトをつくるか、数学の勉強をしています。(数学は)最近ちょっと趣味で始めました。

──数学ですか? すごいですね。

広野:数学と言っても全然仕事に役立つようなものではなく、本当にただの趣味です。東大の大学院生さんに週1で家庭教師をしてもらっています。休みらしい遊びというのはあまりないですね。

エンジニアになったきっかけも数学のある分野にすごい興味を持ったからです。スーパーでアルバイトしていた時、フリーターのままじゃ脳みそを使わない生活だなと危機感が芽生えて。(その分野について)調べていくうちに、プログラミングを使うともっと理解が進むんじゃないかと感じ、Pythonなどをやってみたら「プログラミング、めっちゃ面白い!」ってなって、プログラミングの仕事を探し始めました。

──今お仕事でAI系のことをやっていらっしゃるのはそこからの流れですか?

広野:いや、当時のPythonは本当にただのスクリプト言語でした。いまでこそ優勢を誇っていますが、Rubyの陰に潜む1言語に過ぎませんでしたね。たまたま触ったのがPythonで、仕事で使ったことはほとんどないです。1案件くらいしかなくて。

──高良さんはいかがですか?

高良:僕も広野さんと同じく自分のプロジェクト・プロダクトをつくっていることが多いですかね。あとはジムに行ったり、友達と飲みに行ったりすることが多いです。

──それをお聞きしてほっとしました。僕も週末数学ですと言われたらどうしようかと(笑)

高良:いや、ちょっと前に数学を勉強して、挫折しました。むしろ教えていただきたいぐらいです。

広野:まあ全然僕も、大学をちゃんと出てないので、本当に0ベースでやっている感じで全然教えられないですよ。

──ジムに行かれるということは健康にも気をつけられているんですね。

高良:体を動かすのが好きだからというところがあるかもしれないですね。もともとなにかをやっていたというわけではなく、YouTubeでGACKT式の筋トレみたいなのを見て、「あっ、面白そうだな」と思って、朝晩やり始めたらハマリ始めました。

筋トレ系のジムではなく、暗闇サイクリングっていう、暗い中で音楽に合わせて体を動かすジムに通っています。割とノリの良い感じなのですが、筋肉はたぶんつくと思います。

広野:楽しそうですね。

プログラミングと作曲の共通点

──お二人は作曲をされてたという共通点がありますが、どんな音楽をやってらしたんですか?

高良:今でいうところのEDMとかっていう。

広野:なるほど。僕はジャンル的にはたぶん真逆ですね。学生の頃にJAZZをやっていたんですよ。そこからの流れで割と、アンプラグドな歌謡曲路線でいきたいと思っていました。

高良:生バンド?

広野:そうですね。バンド寄りですね。

──作曲も勉強がすごく必要じゃないですか?

広野:そうですね。だから今エンジニアやってるんですね。「結果難しかったね」っていう。

──曲作りっていかがですか?

広野:まあお金にはならないですね。正直。

高良:そうですね。なりづらいですね。

広野:買い叩かれますね。当時からフリー素材みたいなのがだんだん出始めてはいました。だからこのコンテキストに合うもの、曲を書いてくれみたいな需要がそもそもあんまりないんですね。

高良:一部の人は売れるけど。

広野:そうそうそう。職業作曲家というよりは、バンドマンとか、いわゆるアーティストと呼ばれるような立ち位置でヒットを出した人たちは儲かる、みたいな業界の構図ですね。

──プロとしてやっていくことも考えましたか?

高良:最終的には考えなかったですね。プロになった先輩がいたんですけど、精神的に辛そうだったりするのを目の当たりにしてしまって。

同人という、例えばコミケとかで売っていく道を選べば、割と頑張れば稼げるかもしれませんね。自分の作りたいものを作って稼げる感じです。プロの道だと、どうしても自分の表現したいものが表現できなさそうな雰囲気がありますね。

広野:僕は、大学を辞めて1年~2年くらいは一応、自称作曲家としてちょろっとお仕事もらっていました。割と早めに才能に見切りをつけ、残りの4~5年はただのフリーターでしたね。

──そこからエンジニアになられたということは、なにか共通する部分があるのでしょうか?

広野:エンジニアって音楽好きな人結構多いなと思います。特に作曲の方法論って、理詰めな部分がありますよね。そうじゃない領域ももちろんありますが、「理屈の部分の面白み」みたいなのはプログラミングに通ずるものがあると感じています。

高良:ああ、それすごい思います。理論があって、「こういう風にやるときれいに聞こえる」とか、「こういうコード進行をとると」とかっていう理論的ですよね。エンジニアも「ある理論でこういうふうにやればできる」という考え方に基づいていて、そこが似ているなと感じますね。

フリーエンジニアのやりがいとは?

──エンジニアとしてのお仕事の中で、一番やりがいを感じられるのはどういうところですか。

広野:時期によって興味関心の向きが変わってはいます。最終的に「ビジネスに乗る」とうところが、僕が今すごく関心があるところですね。

今【エミリーエンジニア】にご紹介いただいた案件で、大きな企業の新規立ち上げみたいなものに関わらせていただいています。今までずっとベンチャーで働いてきたので、プロジェクトがお客さんのところに届いて初めてお金になるプロセスは、すごく馴染みがあるつもりでした。でも、大企業の新規プロジェクトは、やらなきゃいけないことというか、達成すべき観点がまるで違います。プログラミングとしてはクオリティーの高いものをいかにつくっていくかみたいなことをゲーム感覚で進められているところに、今はやりがいを感じていますね。

大企業って、本当に変数が無数にあってカオスなんですよね。そこを組織の内側から眺めながら、いろんな人にやりたいことをプッシュしていくことにやりがいを感じています。

──エンジニアとして大変だったことはなんですか?

広野:すごい小さいベンチャー企業で働いていた時は、エンジニアの仕事だけでは済まないんですよね。アプリエンジニアとして入ったはずなのにジャケット羽織って営業行ったりとか。興味の幅は広いつもりだったので、「やる人いなければやるよ」とは言っていましたが、営業としてバリューは出せなかったですね。この現実を知ったときは、結構メンタル厳しかったです。

──なるほど。高良さんはいかがですか?

高良:僕は、かなりシンプルで、ものができていくのが嬉しいなっていうところです。

関わっていた領域が、WEBのフロントエンドとかスマホっていう割と見た目に直結するところだったので、自分がつくるとそれがすぐに反映される。自分が何かつくるとそれがすぐにユーザーに届くことにつくりがいややりがいを感じます。ものづくりの楽しさみたいな。

大変だったポイントは、自分がまだ見積もりとかが苦手だった頃、すごく安く見積もるというか、納期を短く見積もってしまっていたことですかね。本当はもっと納期がかかるのに、正しく計算できておらず、めちゃくちゃ納期がタイトになってしまったプロジェクトがありました。そのときは、年末年始やゴールデンウィークもずっともう夜通し作業することになってしまい、自分の浅はかさを感じたことがありますね。体力的にも、最後の方は結構ノイローゼのようになっていました。

ストレスの乗り越え方

──お仕事の中で時にはメンタルにくることもあると思いますが、乗り越える方法はあったりするのでしょうか。

高良: ものづくりの楽しさを感じることで乗り越えていますかね。出来てきて、見えてきて、動いてきて、もうちょっとで完成する、もうちょっとで終わる、みたいな。

──あと少しだからと自分に発破をかけるみたいな感じですか?

高良:はい。

広野:僕は「そういう現場からは離れる」ですね。だから契約の巻き方とかを工夫します。

必ず3か月単位で更新するようにしています。というのも、本当に相性次第で、どうしようもないことって起きますよね。お客様にとっても、そういう合わない状態でやり続けるのはハッピーじゃないと考えているので、その判断を早いサイクルでするようにしています。アンテナ張って危険度をなるべく早く察知しないと、早くは動けなかったりしますよね。まあたくさん現場を踏むとそういうアンテナはちょっとずつ育ってくると思います。

あとは会社のフェーズや規模感みたいなので、「自分が一番価値を出せる組織」みたいなものも見えてくると思っています。

──その辺のコントロールもご自身のノウハウになってらっしゃるんでしょうね。


現役フリーエンジニアのお二人に「フリーランス」についてお伺いしました。 現役で様々な現場で活躍されているからこそ感じる、フリーランスの向き不向きはとても参考になりました。 

よく言われることではありますが、フリーランスは安定を求めて指示を待つタイプの働き方ではありません。 さらに、自分が出せるバリューを常に考えていらっしゃるという姿勢があるからこそ、フリーランスを続けていられる方々なのだと感じました。 エージェントとして、フリーエンジニアの皆様がご自身のバリューを考える際のアドバイスが少しでもできればと身が引き締まる思いでインタビューを終えました。 

後編では、今注目のAI開発についてフリーエンジニア目線でのポイントや、これからフリーランスを目指す方へのアドバイスをお話いただいています。今までのソフトウェアエンジニアの知識がAI開発では活かせない、その理由とは?

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