【税理士が教える】フリーエンジニアの節税術

節税とは何か

確定申告の相談を受けると十中八九「できるだけ節税したいです!」というリクエストを受けます。「なるべく多く税金を払いたいんです!」という話を聞くことはまずありません。そりゃそうですよね。
確定申告や納税をすると財布からお金が出ていくわけで、財布から出ていくお金をできるだけ減らしたいというのは自然な考え方です。私たち税理士としても協力したいところではあります。
税金を減らすという点で言うと、もう一つ有名な言葉があります。「脱税」です。一般的に「脱税=ダメ、節税=OK」というイメージを持たれがちではありますが、この二つの違いを把握している方は少ないようです。違いをしっかり把握しておかないと「節税」したつもりが「脱税」になっていたということも大いにあり得ます。
ですからまずは「どうやって節税するか」を考える前に「節税とは何か」を知っておきましょう。

脱税と節税の違い

税金に関するあれこれはすべて法律を根拠として定められています。その法律に反して税金を免れる行為「脱税」といいます。
たとえば「この条件に当てはまったら確定申告しないとダメですよ」と決まっている場合。その条件に当てはまっているのに「確定申告をしたら税金取られちゃうからイヤだ」といって確定申告をしなかった場合には、法律に反する行為をして税金を免れていますので「脱税」ということになります。
これは自覚していてもしていなくても変わりませんので、うっかり脱税をしてしまわないようにするためには最低限の税金のルールは知っておく必要がありそうです。

「節税」も「脱税」と同様に税金を免れる行為ではあります。脱税と違うのはその行為が「法律の範囲内で」行われているという点です。

実は法律ではある事象に関してAとBという2つの処理方法が認められていることがあります。たとえば確定申告をする場合。ここでは青色申告白色申告という、ともに法律で認められた2つの方法が用意されています。税務署に対して何も申請をしなければ白色申告なのですが、申請をして青色申告とした場合には税金が少なくなるような特例を受けることができます。「税金を少なくしたいから」と青色申告を選択するように、法律で認められた複数の方法の中で税金が少なくなるものを選択する。これが節税の考え方になります。ということは、「法律で認められた選択肢」というものを知っていなければなりません。
「脱税しないようにする」「節税したい」ともに税金について知る必要がありそうです。ちょっと面倒ですけれど。

納税額を減らすには

個人の所得税と住民税は以下の算式で計算されます(ざっくりですが)。

{(売上-経費)-各種控除}×税率=納税額

この算式から考えると、納税額を減らす方法は4つ。

  1. 売上を減らす
  2. 経費を増やす
  3. 控除を増やす
  4. 税率を下げる

このうち④はそこまでの計算で自然に導かれるものですので、あまり頑張りようがありません。とすると残りは①~③ですが、①は「売上は納品日に計上する」という確固たる基準が用意されており、あまり選択肢がありません。実際上もこれをやってしまうと一番大きな罰金が課されますので絶対にやめましょう。
となると結局残った選択肢は②「経費を増やす」と③「控除を増やす」の二つとなりますので、ここから先はこの2つについてご紹介していきましょう。

経費を増やすためのポイント

経費を増やす、といってもなにも「色んなところにたくさんお金をばらまいてください」ということではありません。日常的に支払っているもののうち、経費になりそうなものをもれなく計上しましょう、ということです。

経費に関しては全貌をご紹介しようとすると長期連載になってしまうくらい盛りだくさんな内容なのですが、今回はその中でも大事ないくつかのポイントをご紹介します。

経費になるかならないかの判断は誰がするのか

「これは経費になるだろうか?」と考えるとき、頭の片隅に税務署や税理士の存在がよぎる方もいらっしゃるかもしれませんし、そのために「やっぱりこれはやめとこう」と考えることもあるかもしれません。ですが、あくまで皆さんの商売に一番詳しいのは皆さんです。ですから「この領収書は商売に必要なもの」とご自身が判断したのであればそれは経費とすべきものです。税務署も税理士さんも、理由をちゃんと説明できればダメとは言いませんし言えません。

金額の限度はあるのか

自分の判断で経費を積み重ねていったらかなりの金額になってしまった場合。「売上はこの金額なのに経費がこれだけあるって多すぎやしないだろうか」と不安になることもあるかもしれません。しかしこれも先ほどと一緒で、「商売上必要」と自分で考えているのであればそれをとがめることはできません。実際、将来に向けての先行投資として費用が先行するようなことも当然考えられます。長い期間それが続くと「生活大丈夫かな…」と心配になることはありますけれど。

どんな書類を取っておけば良いのか

いくら「経費として○万円払いました!」と言っても証拠書類がないと税務署は信じてくれません。そりゃそうです。そこで皆さんは証拠書類を整えておく必要があります。代表格はレシートや領収書ですよね。いちいちもらったりすることが面倒な場合もありますが、その積み重ねが節税につながると思ってしっかりもらうようにしましょう。お祝い金や香典のように領収書をもらいづらい場合にはメモ程度で構いませんので記録を残しておきましょう

何費に振り分けたら良いのか

領収書を取っておいたとしても、それを集計する際に「ガソリン代は交通費?車両費?」などと迷った挙げ句にイヤになってしまう方は多いです。気持ちはわかります。が、経費の集計をする目的はあくまでも利益を計算するためです。ガソリン代が交通費であろうが車両費であろうが、「経費」という括りに入っていることに変わりはありません。そのあたりはアバウトで構いませんので、本筋以外のところで心が折れてしまわないよう気楽に取り組んでください。

控除を増やす方法

所得税では所得控除税額控除という2種類の控除が用意されています。有名なところでいうと医療費控除配偶者控除住宅ローン控除などがありますが、病気になるとか結婚するとか家を買うということは税金対策でやるようなことではありませんし、「税金安くしたいから不摂生して病院にたくさんかかります!」と言う方がいたとしたら、税金より人生が心配になります。ですからここでは無理のない節税として知っておきたい3つをご紹介します。

ふるさと納税

ふるさと納税は「納税」という名前ではありますが所得税の計算では「寄附金控除」として取り扱われます。各地の返戻金をもらえつつ「ふるさと納税額-2,000円」の控除が受け取れるという素敵な制度です。

iDeCo(イデコ)

iDeCoとは、「個人型確定拠出年金」のことで、60歳までの間に毎月一定の掛け金を支払って投資信託や保険などの金融商品を選んで運用し、老後に運用した資産を受け取るというものです。一言で言えば「老後のための資金作り」なのですが、その全額が「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となり、税率をかける利益を圧縮することができます。

小規模企業共済

小規模企業共済は個人事業主の廃業後の生活を安定させるために創設された制度です。個人事業主には退職金がありませんからね。この制度は毎月最高7万円までを掛け金を支払い、廃業時にその金額を受け取るというものなのですが、その支払った掛金の全額がiDeCoと同様に「小規模企業共済等掛金控除」という所得控除の対象となります。

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節税の罪と罰

節税自体は悪いことではありません。税金を払いたくなさ過ぎてうっかり赤字の申告にしてしまったとしても、それが法律に則っており、しっかり理由付けできるものであれば問題ありません。ですが、節税によって利益を減らすにあたってが気をつけていただきたいことがあります。これは実際に私がみた実例です。

赤字申告をしたため他の収入の存在を疑われたケース

赤字で申告をするということは、その年の収入よりも経費の方が多かったということです。その状況であれば生活費を捻出することもできませんよね。それを見た税務署が「赤字であるにもかかわらず生活ができているということは他に何か資金源があるに違いない!」と考えてもおかしなことではありません。疑われてしまうと疑惑を晴らすために資料を用意したり説明をしに行ったりせねばならず、かなり面倒な思いをすることになってしまいます。

所得が少なすぎてローンが組めなかったケース

確定申告書は公的な所得の証明です。ローンを組んだり家を借りたりする際には提示を求められることがありますがその際に所得(=売上-経費)が少なすぎると審査に落ちてしまうことがあります。本来であれば大丈夫なはずの審査なのに節税を頑張りすぎたばっかりに審査に落ちてしまうというのももったいないお話ですよね。

節税策に熱心になりすぎてキャッシュがなくなってしまったケース

経費や控除を増やそうとすると財布からお金が出ていってしまいます。ですから「税金憎し」のあまり頑張りすぎると思ったより手元にお金がなくなってしまい、「これだったらおとなしく税金を払っておいた方が良かったかも…」という事態になりかねません。

まとめ

脱税は絶対にダメなことですが、節税は商売をやっていく上での生活の知恵とも言えます。ぜひ様々な工夫をしつつ、(やり過ぎない程度に)税金を抑える取り組みをしていきましょう。

しかしそこにはある程度の知識が必要となります。
その取り組みが大丈夫なのかダメなのか、どんなリスクがあるのか、他にもっと良い方法はないのかなど、わからないことがでてきてしまった場合にはお気軽に税理士にご質問ください。一人で考えているよりも良いアイデアが出てくると思いますよ。

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