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始めるなら早い方がお得?!フリーランスの節税対策、小規模企業共済って何?

税理士の三木です。多くのフリーランスの方にとって「税金や確定申告、節税のことはよくわからない」ことかも知れません。
今回はそんな皆さんに節税をしながら個人で退職金として積み立てていける小規模企業共済についてお話します。少しでも分かりやすくお伝えするために、今までと形式を変え会話調にしてお届けしたいと思います。 

―(背景)昨年、個人で事業を開始し、昨年分は何とか自力で確定申告を終えた浅野さん(仮名)。思ったよりも利益が出て納税額も思ったより大きな金額に。そこで、学生時代のサークルでお世話になり今は税理士として活躍している山崎先輩(仮名)に何か節税方法はないか話を聞きに行くことにしました。・・・

先輩税理士がすすめる「小規模企業共済」ってそんなにいいの? 

浅野 「先輩、お久しぶりです。」 

税理士 「久しぶりだね、開業おめでとう。そして確定申告お疲れ様。」 

浅野 「いやぁ、やっと先週フリーになって初めてのその確定申告をやってきましたよ。その時に結構税金って取られるんだなぁと思って、今日は先輩にズバリ節税について話が聞きたくてきました、何かいい方法ありますか?」 

税理士 「僕がフリーランスの方に、まず初めにお勧めする節税対策は小規模企業共済だね。」 

浅野 小規模企業共済…聞いたことあります…。確定申告書にそんな言葉があったような…」 

税理士 「そう、確定申告書に『小規模企業共済等掛金控除』という言葉があるね。小規模企業共済は簡単に言うと、フリーランスのための退職金積立制度。会社員と違ってフリーランスは退職金がもらえないからね。だから、自分のお金を自分の将来のために積み立てておくものなんだ。」 

浅野 「それなら、貯蓄と変わらないですよね。自分の将来のためにお金を積み立てるのであれば、単純に銀行に預けたり、そのお金で何かに投資したり、積立式の生命保険に入るのでも良いかと思うのですが…」 

税理士 「確かに小規模企業共済にお金を積み立てるのであれば、他での投資も考えられるよね。でも、小規模企業共済に加入することはメリットが色々あるんだ。」 

浅野 どんなメリットがあるんですか?」 

税理士 「まず、1年間に支払った掛け金を全て所得から差し引くことができる。例えば、事業で500万円の儲けがあって、小規模企業共済に毎月1万円(年間12万円)の掛け金の支払をしたこととする。その場合、12万円の儲けはなかったこととして所得税や住民税を計算することになるんだ。」 

浅野 「そうなんですね、事業で500万の儲けがあって、1年間に払った掛け金が12万円の場合、どのくらいの節税効果があるんですか?」 

税理士 所得税で24,500円、住民税で12,000円、合わせて36,500円位の節税になるかな※1」 

※1 事業所得(青色申告特別控除額65万円控除適用)のみ、所得控除は基礎控除のみ適用の場合、所得税に復興特別所得税を含む。  http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/installment/index.html

浅野 「えええ!?年間12万円の積立てで3万円以上も節税できるんですか?銀行に預けたり、他で投資するより確実性がある気がしますね!」 

税理士 「そうなんだよ。さっき浅野君が言っていたようにお金の運用には色々あるけれど、小規模企業共済の節税効果は大きいんだ。Web上で簡単なシミュレーションできるページもあるので、良かったら見てみるといいよ。」
https://www.smrj.go.jp/skyosai1/cgi-bin/syo-sisan-calc.cgi

浅野 「なるほど!でも、これから先にフリーランスを辞める事になって、今まで積み立てたものを返してもらう時に積立額が大きくなっていたら、それに税金はまた掛かってきますよね?」 

税理士 「そうだね。でも、フリーランスを辞める(事業をたたむ)ことで共済金を受け取る時にも税の優遇制度があるんだ。
例えば、毎月1万円積立てて10年後に事業をたたんだとする。その場合、これまでの掛け金120万円に対して、129万600円の共済金を受け取ることができる。
それで、この129万600円に税金が掛かるかどうかだけど、結論から言えば一括で受け取る場合には所得税も住民税もかからないよ。」

http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/proceed/index.html

浅野 「そうなんですね!小規模企業共済に入る気持ちが強くなってきました!もう少し詳しいことを聞いてもいいですか?」 

税理士 「もちろんいいよ」  

コツコツ積み立てて、30年後に受け取る場合はどうなるの? 

浅野 「先程、10年後にフリーランスを辞めた場合のお話を聞きましたが、今30歳の僕がフリーランスとして30年間働き、60歳で辞めた場合の積立金の受取額(共済金)はいくらになりますか?」 

税理士 掛金月額が1万円で掛金納付年数が30年の場合ということかな。その場合は掛金合計額が360万円、共済金は434万8千円になる予定だよ。」 

浅野  「…予定ですか?」

税理士 「そう。共済金の額は経済情勢等が大きく変化したときには変更されることもあるらしい。」 

浅野 「そうなんですね。でも、月1万の掛金で毎年3万円以上節税できて、30年後に約75万円も上乗せして戻ってくるのはありがたいですね。」 

税理士 「そうだね、30年後に共済金を受取る場合、1,500万円※2 までは所得税も住民税もかからないよ。つまり、月額1万円でなく、月額3万円を30年納付して受取る共済金が434万8千円の3倍の1,304万4千円になっても、それに所得税・住民税はかかることがないんだ。」 

※2 退職所得控除額の計算方法(掛金納付年数20年超の場合)
800万円+70万円×(掛金納付年数30年-20年)=1,500万円

浅野 小規模企業共済は払った時もお得、受け取る時もお得なんですね!」 

「小規模企業共済」の掛け金っていくらにすればいいの? 

浅野 「さっき、月1万円や3万円を同額掛け続ける場合でお話を聞きましたが、今はお金に余裕があるので、もっと大きい金額を掛けても大丈夫ですか?でも、今年はあまり利益がでなかったらどうしよう…」 

税理士 掛け金は毎月1,000円から70,000円の範囲で、500円刻みに設定することができるよ。まずは出せる範囲で設定すればいいと思うよ。あと節税効果が大きいとはいえ、毎月7万円を12ヶ月10年間続けたら840万円。決して少ない金額でないから、他で投資した方が結果よかったという事がないわけでもない。 
つまりは、今は負担のない範囲で掛け金を決めることが一番よいと思うよ。」 

浅野 「わかりました」 

税理士「掛け金の支払い方法は前納、月払い、半年払い、年払いと色々あるけれど、まずは月払いで毎月の支出額を一定にした方が金銭的負担も軽く感じるしいいんじゃないかな。」 

 「小規模企業共済」どうやって申し込めばいいの? 

浅野 早速、申し込みを真剣に検討してみたいのですが、どうすればいいんですかね?」 

税理士 大きく分けて3通りかな。委託団体を通すか、代理店を通すか、税理士である僕を通すか。委託団体は商工会・商工会議所・青色申告会など。
代理店は都市銀行・信託銀行・信用金庫などの金融機関。僕を通す場合は手数料が発生することと、諸手続きを本来の期限よりも早めに行わなくてはならないというデメリットはあるけれど、加入手続きや減額・増額の手続きや共済金受取の手続きなどをサポートするよ。」 

浅野 「わかりました!検討します」 

 「小規模企業共済」って中途解約できる? 

浅野 「もし金銭的に掛金を支払続けるのが苦しくなったり、他にお金を回したくなったりした時に中途解約はできるんですか?」 

税理士 「もちろんできるよ。ただ、急にお金が要り様になったからという理由で解約する場合で掛金納付月数が20年未満だと戻ってくる金額は掛金合計額を下回ってしまうから気を付けてね。節税効果を考慮すれば掛金金額を下回っても元はとれるけど…。実質元本が保証される期間の話は細かい計算の話になるから、ここでは割愛するね。」 

 個人事業主・フリーランスでも加入できない人っているの? 

浅野 「今更ですが、僕は加入資格ありますよね?」 

税理士 今の浅野君は個人事業主だから加入できるよ。ただ、去年末まで浅野君は会社勤めでお給料をもらいながら、事業をしていたでしょう?その場合は加入できないよ。」 

浅野 「そうなんですね。副業サラリーマンは小規模企業共済に加入できないのですね…」 

税理士 「そういう場合は確定拠出年金(iDeCo)をお勧めするかな。ちなみに浅野君の場合は小規模企業共済とiDeCoの両方に加入することもできるよ。慎重派の浅野君の場合は、リスクをとって投資信託等で掛け金を運用するiDeCoより、原則として元本保証型の予定利率1%で掛け金運用する小規模企業共済の方が安心感を得られるとも思うけど…。でも今日はその話もすると長くなるからまた今度ね。」 

 その他いろいろ  

浅野 「色々とありがとうございます。パンフレットや小規模企業共済のホームページも確認して検討したいと思います。加入する時期はいつ頃がよいとかありますか?」 

税理士 「もし、加入を前向きに検討するならば、早めの加入をお勧めするよ。解約をする理由が事業をたたんだ場合や個人事業主から法人設立(法人成り)をした場合は掛金の元本は保証されるけれど、掛金納付月数が6ヶ月未満の場合、または12ヶ月未満の場合でも共済金受取に注意事項が発生するから、まずは掛金納付月数を一定期間確保するためにも少額でよいから加入してもよいのではないかな

浅野 注意事項とは何ですか?」 

税理士 「まず、共済金の請求事由にはいくつか種類があるんだ。『共済金A』は共済事由が個人事業の廃止、個人事業主の死亡などの場合。『共済金B』は共済事由が老齢給付(65歳以上で180か月以上掛金を納付した方)などの場合。『準共済金』は個人事業を法人成りした結果加入資格がなくなり解約した場合。そして最後に解約した場合だね。 
掛金納付月数が6か月未満の場合は、共済金A、共済金Bは受け取ることができない。そして12か月未満の場合は、準共済金、解約手当金は受け取ることができないんだ。だからまず少額でも早めの加入の方がよいのではと思うんだ。」 

浅野 「わかりました!小規模企業共済のいい話ばかり聞いてきましたが、デメリットもありますか?」 

税理士 「う~ん。細かい話になるけれどインフレには対応していないかな。つまり、お金の価値が下がったら、掛金と同額の共済金を将来受け取ったにしても実質的な価値は下がってる。ということ。でもこれは小規模企業共済だけの話ではないからね。そうなった時に対策を考えることとして、まずはあまり気にしなくて良いかな。」 

浅野 「あと何かありますか?」

税理士 「そうそう、忘れてた。払い込んだ掛金と同額までお金を借りられる融資制度もあるよ。融資は無担保無保証人で受けられ、一般貸付けの場合の利率は年1.5%。ただ返済期間が短くて延滞利子は年14.6%(平成31年3月現在)だから、注意が必要だよ。いざという時にも安心な制度だけど、解約がよいのか貸付がよいのかは、その時にまた相談しよう。」

http://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/about/loan/01.html

浅野 「わかりました、今日はありがとうございました!」 

税理士 「参考になったなら嬉しいよ。今日は小規模企業共済について話をしたけれど、節税対策と言われるものは他にも色々あるんだ。みんな一度は耳にしたことがあるふるさと納税や、さっき少し話にもでた確定拠出年金もそうだね。またゆっくり話をしよう。」 


いかがでしたか。今回は多くのフリーランスの方が活用することのできる小規模企業共済について説明いたしました。フリーランスの方が納めている所得税・住民税は、税の公平性を保つためにも、個人の事情を様々な観点から考慮がされる仕組みになっています。所得控除はその代表的なものですが、他にも検討できる事項は多々あります。

このコラムでも可能な限りご紹介していきますが、お近くに無料相談など受付けている税理士事務所等があれば一度お話を聞きに行くのも一つですし、エミリーエンジニアでは税理士のご紹介も行っていますので、一度ご相談ください。 

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