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フリーランスの住民税・事業税ってどうなってるの?

税理士の三木です。確定申告と所得税の納税が終わりホッとするのも束の間。6月は住民税の納税通知書が届く時期です。サラリーマンの場合は給与から天引きされていた住民税フリーランスとなった場合は、忘れずに自分で払わなくてはなりません。住民税の支払いがあるのを忘れて「納税するお金がない!」ということにならないようにしましょう。住民税と同様に忘れがちになる事業税についても簡単に説明します。 

はじめに 

昨年、個人で事業を開始し何とか自力で確定申告を終えたフリーランスエンジニアの浅野さん。そんな浅野さんが学生時代のサークルでお世話になり、今は税理士として活躍している山崎先輩のところへ「住民税・事業税」について話を聞きにきました。 

浅野 「山崎先輩…こんなものが届いたのですが、何ですかこれ?」 

税理士 「『特別区民税・都民税 税額決定兼納税 通知書※1』 住民税の納付のお知らせだね。 」 
 ※1 納税地が東京23区内の場合。東京23区以外の場合は特別区民税は市町村民税、東京都以外の場合は道府県民税・市町村民税などと呼称が異なる。 

浅野所得税を3月に納付したばかりだというのに、また払わなきゃいけないのですか?」 

税理士所得税は国への支払い、住民税は地方公共団体(都道府県・市町村)に支払うもので別のものだからね。」 
浅野課税明細書というのも同封されていますが、これについては確認する必要はありますか?」 

税理士 「そうだね、それも含めて今日は住民税について話をしようか。あと事業税についても簡単に説明するよ。」 
浅野 「はい!お願いします!」 

住民税っていつどのように払うの? 

浅野 「住民税って4回も払わなきゃいけないのですね。」 

税理士6月末、8月末、10月末、来年1月末の4回に分けての納税になるね。6月末までに一括で4回分全部払うことも可能だよ。それぞれ納期限前ならどのタイミングで払っても大丈夫。」 

浅野 「4回に分けての納税だと1回あたりの負担が少なくていいですね。」 

税理士 「以前は一括で払うと少し安くなることもあったけど、今はそういうこともないから納期限前に払えるタイミングで払えばいいよ。」 
浅野 「払い方にはどのような方法がありますか?」 

税理士 「以下のような支払方法があるよ。地方公共団体によっては導入していないものもあるから、納付書の裏面を参考にしたり、納付書に問い合わせ先として記載されている電話番号に電話して確認するのが確実だよ。 

・銀行・信用金庫・信用組合での支払い 
・ゆうちょ銀行・郵便局での支払い 
・コンビニエンスストアでの支払い
・MMK(マルチメディアキオスク)設置店での支払い
・市区町村の役所での支払い
・Pay-easy(ペイジー)に対応しているATMでの支払い
・インターネットバンキング・モバイルバンキングを利用しての支払い
・モバイルレジや、「Yahoo!公金支払い」を利用してのクレジットカード払い」

浅野 「色々な方法があるのですね」 

税理士クレジットカード払いにして、クレジットカードのポイントを貯めることもできるよ。ただ、クレジットカード払いにすることで支払手数料も発生するから本当にお得かどうかきちんと確認した方がいいよ。」 

浅野 「支払いを忘れて納期限が過ぎてしまった場合はどうなりますか?」 
税理士 「督促状が送られてくるよ。金額と延滞期間によっては延滞金が発生するから気を付けてね。」 

住民税はどのように計算されるの? 

浅野 「住民税って前年の所得を基に計算されるんでしたっけ?」 

税理士 「そうだよ。3月15日までに所得税の確定申告書を提出したよね?それを基に住民税は計算されるんだよ。税率は課税所得の約10%だよ。所得税の確定申告書の第1表に『課税される所得金額』という欄があるから探してみよう。」 

浅野 「僕は去年の途中までサラリーマンで10月から事業を開始しました。ということは給与所得と事業所得両方に住民税がかかるということですね。」 

税理士 「その通りだね。10月からの事業開始で利益もそれなりに出ているんだよね?それだと住民税の支払額もまぁまぁ大きな金額になりそうだね。」 

浅野 「住民税の納付書と一緒に課税明細書が来ましたが、これはちゃんと見た方がいいですか?」 

税理士 「そこは気になるのであれば見ても良いという感じかな。提出した所得税の確定申告書を基にして地方公共団体が住民税を計算してくれているんだ。所得税は自分で計算(申告納税方式)をするけど、住民税は各自治体が計算(賦課課税方式)をしてくれる。課税明細書はその計算してもらったものを確認することができるんだ。」 

浅野 「確定申告書を基に計算しているのであれば、確定申告書に記載した数字がこの課税明細書に書かれていればいいんですね。」 

税理士 「基本的にはそうだけど、そうとも言えないんだ。つまり、所得税の確定申告書の数字が丸々住民税の計算に使われるわけではないということ。例えば、確定申告書での基礎控除額は38万円だったけど、住民税の課税明細書に記載されている基礎控除額は33万円。所得税と住民税の計算方法は似ていると言えど、異なる部分もあるから細かく確認するのは勉強しないと難しいかな。」 

浅野 「じゃぁ、見なくてもいいですね!」 

税理士 「そうだね(笑)。ふるさと納税をした場合には、寄附金税額控除がされているか。ローン控除額が所得税から引ききれなかった場合は住民税から控除※2されているか。この位をサラっと確認すればいいんじゃないかな。」 

※2 所得税で控除しきれなかったローン控除額の全てが控除されない場合もある。 

住民税にも節税はあるの? 

浅野 「所得税の時には色々節税対策があると聞きましたが、住民税にも何かありますか?」 

税理士 「所得税の時にした節税対策、例えば小規模企業共済への加入やふるさと納税などはそのまま住民税の計算でも反映されるから、住民税だけに限った節税は考えなくてよいよ。」 
浅野 「わかりました」 

税理士 「ただ、災害にあった時や死亡した時生活保護を受けている時は市区町村に応じて減免制度がある場合があるから、何かあった時は直接各自治体に問い合わせしてみるといいよ。」 

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住民税で気を付けることはある? 

浅野 「住民税は前年の所得に課税がされるから、『前年は稼げたけど、今年は稼げていない』という場合は納税資金に困る可能性があるから気を付けないといけないですよね。その他に気を付けることはありますか?」 

税理士 「あるよ。所得税の確定申告義務がない人でも住民税の確定申告義務がある場合は注意しなければならないね。」 

浅野 「所得税では事業所得で赤字の場合※3、黒字でも基礎控除額の38万円を越えないときは確定申告書は提出しなくてもよいと聞いていますが…」
 ※3青色申告の場合は赤字を繰り越す場合には確定申告は必要 

税理士住民税では所得が1円でもあれば申告しなければならないことになってるよ。あと、もし会社勤めもして給与をもらっているフリーランスの場合で会社にフリーランスで仕事していることがバレたくなくても住民税を通してバレることがあるから注意しなければならないね。」 

浅野 「僕はもう退社しているのでその心配は不要ですが、フリーランス仲間でその心配をしている人が多くいます。その人達はどうすればいいんですか?」 

税理士副業を会社にバレないように防ぐ手段は1つ。給与分と副業分の住民税の請求を分けてもらうこと。所得税の確定申告書の隅に『住民税・事業税に関する事項』という箇所があるのだけど、ここの『自分で納付』のところに〇をしよう。ここに〇をすれば大抵は大丈夫だけどこの欄は市区町村で見落とされることもないとは言い切れない。心配なら役所に電話するしかないけど、役所も忙しいから気を使わないとね。」 

事業税ってなに? 

浅野 「住民税の支払いについては分かりました。今後まだ他の納税ってありますか?」 

税理士 「所得税、住民税の次に事業税の納付があるよ。事業税も住民税と一緒で確定申告書を基に都道府県が計算をして納税通知書が送られてくる。納税のタイミングは原則として8月と11月の年2回だよ。」 

浅野 「事業税って支払わなくてもよい人もいるんですよね?」 

税理士所得が290万円を越えなければ事業税を支払う必要はないよ。ただ浅野君の場合は事業開始が10月だから、290万円×3ヵ月(10~12月)/12月の72万5千円を超えるようであれば事業税の納付する義務があるよ※4。」 

※4 エンジニアの場合、働き方や仕事内容などにより個人事業税の対象とならない場合もあります。そその判断は管轄の都税事務所や県税事務所により行われるため分からない場合は問い合わせをしてみましょう。 

浅野 「あぁ、超えてますね…。去年の10月から12月の3ヵ月の所得が150万円程あったので控除額を差し引いても80万円位が課税対象ということですね。」 

税理士 「個人事業税の税率は業種によって異なるけれど、ほとんどの業種は5%。浅野君の今年度の事業税の納税額は38,750円位になるんじゃないかな※5。所得税や住民税は事業の必要経費にはならないけれど、事業税は必要経費になるから納付済領収書はとっておくようにね。」 

※5 事業税の計算式は、(収入 ー 必要経費 ー 専従者給与等 ー 事業主控除額) × 税率。 
今回の浅野さんの場合、
収入:60万×3ヶ月、経費:10万×3ヶ月、専従者なし、繰越控除額なし、税率5%として計算 
(180₋30₋72.5)×5%=38,750円 

浅野 「…はい。分かりました。サラリーマンの時は給与から税金が毎月引かれていたから負担も少なく感じていたけれど、フリーランスになると負担感が増しますね。所得税、住民税、事業税…もうさすがに発生する税金はないですよね?」 

税理士 「売上が多くなれば消費税、事業を拡大して一定の規模以上になれば事業所税もあるけど、浅野くんの場合は今はまだ考えなくてもいいよ。」
 浅野 「はい、今日もありがとうございました!」 

おわりに

いかがでしたでしょうか。所得税の確定申告納税が終わり安心しているのも束の間、6月以降になると、その確定申告書を基に住民税事業税が計算され納付書が届き納税が発生します。去年たくさん利益が出たし、所得税も払ったし、と残っているお金を何も考えずに使ってしまうのは危険なことです。住民税や事業税の納税資金も貯めておくようにしましょう。税理士を顧問としている場合は、所得税の他にも住民税や事業税の概算額も所得税申告時に教えてもらえることがほとんどなので安心です。 

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