【税理士が教える】フリーエンジニアなら知っておきたい確定申告

確定申告とは

サラリーマンの時にはあまり馴染みがなかった確定申告ですが、フリーランスになると多くの方は確定申告が必要となります。なぜサラリーマンの時は確定申告を行わずフリーランスになった途端に確定申告をする必要があるのでしょうか。それは、サラリーマンの時は勤務先の会社が確定申告の代わりとなる年末調整をしてくれていたからです。
しかし、フリーランスになった場合はどうでしょうか。年末調整で正しい所得税を計算してくれる人はいなくなります。よって本人が確定申告をする必要があるのです。
フリーランスにとって、確定申告は所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料も決定される重要なものとなります。確定申告をすべき人は毎年忘れずに行うようにしましょう。とはいいつつも、確定申告をすることになった場合、何からすればいいか分からない方が多いのではないでしょうか。
確定申告とは簡単に言うと下記の①~⑥の作業をし、所得税額を確定させ、税務署に2月中旬から3月中旬に申告するものです。

  1. 申告する前年1月1日〜12月31日までの売上を集計する
  2. ①に対応する経費の集計する
  3. ①から②を差引いた金額(これを事業所得といいます)を算出する
  4. ③の事業所得から各種所得控除を差引く
  5. ④の金額に一定の税率をかけた上で一定額を控除し所得税を算出する
  6. ⑤の金額に税額控除(該当するものがある場合)を差引く

①~③は「事業所得の計算方法」を、④は「各種所得控除の計算方法」を、⑤⑥は「所得税額の計算方法」をご参照ください。

事業所得の計算方法

では早速、1年間頑張って働いて得た利益について計算をしましょう。
この計算が確定申告でも重要となる「事業所得」の計算です。事業所得の計算の基本は1月1日〜12月31日までの「売上」と「経費」を集計することです。

売上の計算方法

売上は所得税計算の対象となる1年の間のサービスの提供や商品の引渡しの完了に伴って受取る代金や受取る予定である代金はすべて売上となります。
仮に今が12月だとして、12月にサービスの提供は完了しているが、代金の受取りは翌年の1月という場合でも今年の売上となります。また、12月に代金を受領していたとしても、そのサービスの提供が翌年の1月になる場合には、翌年の売上となります。

売上の確認方法の1つとして、得意先から年明け頃に送られてくる支払調書があります。こちらに記載される金額は今年に実際に受取った金額が記載されるため、実際の売上として計上する金額とは異なる可能性もあります。
上記のように異なる場合があるので普段から自分で売上を管理しておきましょう。

支払調書サンプル
支払調書サンプル
国税庁WEBサイトより

必要経費の計算方法

次に売上と同じ1~12月に発生した必要経費の計算方法についてです。必要経費を一言で説明すると売上を得るために支出する金額です。
例えば取引先と食事した場合や取引先に行く際の交通費や仕事に必要な書籍の購入等が挙げられます。そのため明らかにプライベートと判断できる友人と食事した場合や仕事と関係ない書籍の購入費用は必要経費とは言えません。「必要経費になるだろうか」と悩んだ場合は、「商売に必要なもの」と説明ができるものは経費となります。

次に、必要経費の証拠書類となるレシートや領収書は捨てずに取っておきましょう。
しかしAmazon等のネットショッピングで使用した場合やクレジットカードで支払う場合に領収書が出ない際は、クレジットカードのご利用明細書の他、商品の納品書を保管しましょう。
以上をまとめると以下のように経費を集計していくとよいと思います。

  • A 明らかにプライベートで使用した領収書等を除外する。
  • B 明らかに事業で使用した経費の領収書を残す。
  • C A・B以外に当てはまるかどうか分からないものは各自で判断し税務署に仕事で必要な経費と説明できるもののみを残す。

事業所得の計算方法

売上の集計金額から必要経費の集計金額を引いた金額事業所得です。
計算後に「所得税の青色申告承認申請書」(後述)の適用を受けている方は、さらに65万円又は10万円の青色申告控除があります。
「所得税の青色申告承認申請書」の提出がない場合には白色申告となり上記の特典を受けることができません。

各種所得控除の計算方法

事業所得の計算が終わった後に、考慮するものは所得控除です。
所得控除とは、家族構成や個人的な事情を考慮して税金の負担を考慮してくれるものになります。同じ年収がある人でも、家族が多い人や、病気がちな人は日常生活において何かと出費があるものです。そこを考慮してくれるのが、所得控除です。代表的なものをいくつか紹介します。

A 医療費控除

病院に行ったら領収書を取っておくようにしましょう。1年間の医療費が年間10万円を超える場合、医療費控除の適用を受けることができます
所得が低い場合は10万円以下でも医療費控除を受けることができる場合があるので、とりあえず、病院の領収書を取っておくことが大事です。

B 社会保険料控除

任意継続の健康保険料、国民健康保険料、国民年金の保険料、国民年金基金の掛金がある場合には、こちらの控除を受けましょう。
国民年金保険料を支払っている場合には、10月末以降に「社会保険料(国民年金保険料)控除証明書」が日本年金機構より届きますので、保管しておきましょう。

社会保険料(国民年金保険料)控除証明書サンプル
社会保険料(国民年金保険料)控除証明書サンプル
日本年金機構WEBサイトより

C 小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済の掛金確定拠出年金 iDeCo(イデコ)の掛金がある場合には、こちらの控除を受けましょう。

D 生命保険料控除・地震保険料控除

生命保険料・地震保険料を支払った場合にはこちらの控除を受けましょう。
加入している生命保険会社等から「あなたは今年これだけ支払いますよ」という証明書が毎年10月頃に届きますので大切に保管してください。

E 寄附金控除

日本赤十字社に対する寄附ふるさと納税などをした場合には、こちらの控除を受けましょう。
その他、障害者である場合、配偶者と離婚・死別した場合、働きながら学生である場合などに受けられる所得控除もあります。

これらの所得控除は計算が複雑なものや、控除対象になるのか分かりにくいものがあります。分からないことは国税庁のホームページを参考にしたり、最寄りの税務署へ問い合わせれば教えてもらえます。
また、国税に関する各種手続きがインターネット等を利用して電子的に手続きが行えるシステムとしてe-taxがあります。e-taxを使用すれば自動システムで計算がされるので便利です。

所得税額の計算方法

事業所得、各種所得控除の集計結果に税率をかけて所得税額をだします。
「住宅ローン控除」等の適用がある場合には、上記計算した所得税額からローン控除額等を直接引く事ができます。
これにより算出した所得税額から既に引かれた源泉所得税を引いた金額が一年間の納税額になります。

確定申告書の提出方法

1年間の所得税額の計算が終了したら、いよいよ作成した確定申告書の提出です。納付する所得税額がある場合の確定申告書の提出期間は原則2月16日から3月15日(15日が土日祝の場合はその翌日)となります。もし、所得税の計算をした結果、返ってくる税金の方が多い場合は還付申告といって、計算した年の翌年1月1日から5年間還付申告書を提出することが可能です。

確定申告の提出方法は3つあります。

  1. 直接税務署に持参
  2. 郵送
  3. e-tax

①の直接税務署に持参する場合は提出期限が近づくと大変混み合うので時間に余裕をもって行く必要があります。
②の郵送は申告日の当日消印が有効です。申告日の夜にポスト投函した場合に消印が翌日となる場合がありますので注意しましょう。
また提出する際には簡易書留(又は特定記録郵便)にし、かつ申告書を返送してもらうために返信用封筒(切手も貼る)を入れましょう。

※①②の方法で提出する場合は、申告書と控えの2部用意し、控えには税務署に収受印を押してもらい(②の場合は切手を貼った返信用封筒を同封し)返却してもらうようにしましょう。この控えは所得の証明が必要な場合(銀行から借入を行う場合など)に求められる場合があります。

③のe-taxで電子申告するには事前に申請し、マイナンバーカードや住民基本台帳カードなどの電子証明書とICカードリーダーを用意する必要があります。少し面倒ですね。個人で申告する場合にはあまり使わないかと思います。
ただ、e-taxで確定申告書を提出しないとしても、国税庁のHPにて確定申告書をオンラインで作成することが可能です。所得税の計算も自動で行われます。e-taxで確定申告書を作成したものを①か②の方法で提出する場合がほとんどです。

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所得税額の納付はどうするの

作成した確定申告に記載された所得税額がある場合は3月15日までに金融機関又はクレジットカード又はネットバンキングで納付します。
口座振替の手続きをすることも可能でその場合の口座振替日は4月中旬~下旬となります。口座振替の依頼は3月15日までに所轄税務署か口座振替を利用する金融機関に依頼書を提出すれば問題ありません。

事業を開始したらスグにすること

ここまで確定申告の話をしてきましたが、確定申告の前に大事なことがあります。事業を始めようと思った場合には、事業の開始した日から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書」の書類を管轄の税務署に提出する必要があります。自分がどの税務署が管轄か分からない場合は「住所 税務署」などで検索しましょう。

また、その際に「所得税の青色申告承認申請書」を提出するといくつかの特典が受けられる事ができます
前述した事業所得の計算の最後に65万円(又は10万円)を控除することができたり、親族に支払った給料を必要経費にすることができたり、事業で赤字が生じてしまったとしても、この赤字を翌年以後3年間にわたって繰越ができるので、翌年黒字ができた場合には、赤字部分を差し引くことができます。
この「青色申告の特典」は申請書を提出するだけでなく、帳簿を正しくつけることも必要になります。

まとめ

はじめての確定申告は分からないことも多くあります。やりたくない…と手を付けられない人も多くいるでしょう。
迷ったらまず相談しましょう。最初から全てが分かる人はいませんし、同じ疑問を抱えている人は多くいます。無料で相談にのってくれる税理士もいますし、税務署に直接問い合わせをすることも有効です。

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