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フリーランス(個人事業主)になった場合の税務上の手続きー現役税理士の解説コラム001ー

フリーランス(個人事業主)になったけど何も手続きしていない方、これからフリーランスになろうとしている方、国に対して手続きをするのを忘れないようにしましょう。国に対する手続きと言うと固く聞こえますが、手続きは簡単です。インターネットや本で開業手続きを調べると、多くの情報を見つけることができますが、とりあえずは2つの書類を出せば大丈夫です。

2つの書類とは・・・
  • 「個人事業の開業・廃業届出届」(以下、「開業届」)…①
  • 「青色申告承認申請書」 …②

簡単に言うと、①は今日から私は個人事業主だと国に宣言するもの。②はきちんと帳簿をつける代わりに税金の優遇しお願いするものです。

①②ともに、記載する用紙は税務署にもらいにいくか、下記国税庁のホームページからも入手することができます(「開業届」はこちら。青色申告承認申請書」はこちら)。記載ができたら管轄の税務署に提出しましょう。

次に届出書と申請書の実際の書き方を紹介します。手元に用紙を用意し、実際に書いてみましょう。

個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)の記載ポイント

税務署

管轄の税務署を記載
(住んでいる住所 税務署で検索すればでてきます)

日付

提出日を記入(郵送の場合は投函日)

納税地

住所地=日々の生活しているところ(住民票があるところ)、事業所等。
自宅とは別に事務所を構えている場合、居所地、海外を拠点としている人が一時的に帰国し、日本で活動した場合の日本での住所(親戚の自宅等)。
通常は住所地に○をして自宅の住所を記載

※税務署からの郵送物を受け取りやすい場所にする
※電話番号は携帯でもOK

上記以外の住所地・事業所等

納税地に住所地を記載した場合で事務所等がある場合には事務所等の所在地、納税地に事務所等を記載した場合には住所地を記載。
客様先に常駐している場合は事務所等の所在地に代えて常駐先の住所でも可

個人番号

マイナンバーを記載

職業

(例)エンジニア 等

屋号

あれば記載(空欄でもOK) ※1

届出の区分

一番上に記載がある開業に「○」

所得の種類

エンジニアであれば事業所得に「○」

開業日

開業した日を記載(フリーランスとして活動を開始した日、対外的に事業活動を始めた日)

開業・廃業に伴う届出書の提出の有無(上段)

後述する「青色申告承認申請書」を提出する場合には有に「○」

開業・廃業に伴う届出書の提出の有無(下段)

消費税に関する書類を提出する場合には有に「○」※2

事業の概要

(例)ソフトウェア開発 等
給与等の支払の状況以下の欄 従業員を雇う場合以外は記載する必要はありません。


※1 屋号を記載すると銀行口座を作成する際に屋号で口座が作る事ができます。
※2 消費税の課税事業者を選択する場合に提出する必要があります。原則は、売上高が1,000万円を超えた翌々年から課税事業者となります。開業1年目に消費税課税事業者届出書を提出した場合は提出した日の属する年に課税事業者となります。これを選択した方がよい場合は預かった消費税(売上に係る消費税)より支払った消費税(仕入等に係る消費税)が多い場合です。

これで「開業届」は完成です。提出期限は開業した日から1ヶ月以内です。
もし、提出を忘れたまま開業した日から1ヶ月経過していてもご安心ください。罰則はありませんので気がついた時になるべく早く提出をするようにしましょう。

「青色申告承認申請書」について

次に「青色申告承認申請書」について簡単に説明します。

フリーランスになったら多くの場合確定申告が必要となります。そしてその確定申告書には「青色申告」と「青色申告以外の申告(白色申告)」の2種類があります。

この2つの違いをざっくり言うと、青色申告は多少の手間は増えるけれど、様々な特典が受けられる。白色申告は青色申告と比べると少し楽だが特典がもらえない、ということ。

青色申告にかかる手間というのは、帳簿をつけることです。例えば、freeeやMFクラウドのような 会計ソフトを用いると青色申告の水準を満たす記録が簡単に作成することができます。これらのソフトは利用料も年間約1万円程度ですし、まずは「青色申告」を選ぶことをオススメします。

※平成26年1月より「白色申告」も最低限の帳簿をつける必要があることとなりました。

青色申告の代表的な特典は「青色申告特別控除」「青色事業専従者給与」「純損失の繰越控除」の3つあります。この3つ以外にも青色申告となった場合に受けられる特典がありますが重要性は低いのでここでは省略します。

【青色申告特別控除】とは

最大65万円分の経費を実際にお金を使っていなくても計上できます。(白色の場合は0円)

【青色事業専従者給与】とは

同居している家族に支払う給料を経費にすることができるものです。
この適用を受けるには青色事業専従者給与の関する届出書を提出する必要があります。

【純損失の繰越控除】とは

赤字が出た場合、その赤字を3年間繰り越すことができます

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「青色申告承認申請書」の記載するところと記載ポイント

税務署 / 日付 / 納税地 / 上記以外の住所地・事業所等 / 職業 / 屋号

「開業届」と同様

平成XX年分以後の所得税の申告は、〜

受けたい年分(基本的には開業年)を記載

1.事業所又は所得の基因となる資産の名称及びその所在地

自宅が事業所の場合は自宅の住所を記載
自宅以外に事業所がある場合は事業所の住所を記載

※名称は空欄でもOK。事業所に本店がある場合は記載

2 .所得の種類

「開業届」と同様

3 .いままでに青色申告承認の取消しを〜

はじめての青色申告であれば「無」にチェック

4 .1月16日以後新たに業務を開始した場合〜

開業日が1月1日から1月15日以外の場合は、開業した年月日を記載

5 .相続による事業承継の有無

自分で事業をはじめた場合など、多くは「無」に○

6 .その他参考事項

(1)簿記方式

複式簿記にチェック(65万円控除)、(簡易簿記にチェックした場合は10万円控除)

(2)備付帳簿名

現金出納帳・総勘定元帳・仕訳帳はチェック

(3)その他

記載なしでOK


提出期限は1月1日から1月15日までに開業した場合は「その年の3月15日」。1月16日から12月31日に開業した場合は、事業を開始した日から2ヶ月以内です。

この「青色申告承認申請書」に関しては提出期限を過ぎてしまった場合、青色申告をしたくても翌年からの適用になってしまうので、提出を忘れないように注意しましょう。

これで個人事業主の開業にあたっての、これから事業を始める方に共通した届出書類は完成です。

あとは自分の管轄の税務署へ提出しましょう。一般的な提出方法は2つ
・直接管轄の税務署にもっていく
・管轄の税務署へ郵送

※ 注意点としては「提出用」と「控え用」の2部を用意・郵送しましょう。郵送の場合は切手を貼った返信用封筒を同封しましょう。そうすれば、税務署で「控え用」の書類にも捺印をしたものを返送してくれます。

参考までに…

事業を開始した場合、とりあえず提出する書類は「開業届」と「青色申告承認申請書」の2つだけとお伝えしましたが、15歳以上の家族に仕事を手伝ってもらいお給料を払うのであれば、「青色事業専従者給与に関する届出書」も忘れずに提出しましょう。提出をしない場合、家族に渡したお給料を必要経費とすることができません。
一つ注意が必要なのは、お給料を渡す家族が他で仕事をしている場合は、「青色事業専従者給与」として必要経費にすることができません。

また、渡す給料の額は、他人を雇った場合に支払う金額と大差がないよう、また仕事内容に見合った金額としましょう。当然ですが実際に働いていないのに事業専従者給与として支払いをし、必要経費とする事はできません。
「青色事業専従者給与に関する届出書」の提出期限は原則、払い始める年の3月15日まで。ただし、年の途中に開業した場合・年の途中に新しく専従者になった場合は開業した日又は専従者となった日から2ヶ月以内となります。

最後に、繰り返しとなりますが、新しく事業を始めた場合に誰も雇わない場合は「開業届」「青色申告承認申請書」の提出をすればOKです。

特に「青色申告承認申請書」は提出を忘れた場合には、受けられるはずの特典が受けられずもったいない事になりますので忘れずに提出しましょう。

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