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損をしないための確定申告ー現役税理士の解説コラム002ー

年に一度やってくる恐怖の確定申告。1年間分の売上とレシートの集計を終えて、「終わった~!」と思っている方、本題はこれからですよ!1年間であげた利益に係る所得税の額をいかに減らすかが大事!そう、「所得控除」と「税額控除」のチェックをしましょう!

※利益とは1年間の売上から必要経費を引いた金額です。青色申告者の場合は、この利益から最大65万円(又は10万円)の青色申告控除をした金額(事業所得の金額)を元に所得税の計算をしますが、ここでは分かりやすく「利益」と表現します。

「所得控除」と「税額控除」ってなに?

「所得控除」と「税額控除」はどちらも「税金を減らすもの。」
地震で家が壊れてしまった。病気をして医療費がたくさんかかってしまった。障がいを持った家族がいる。自宅をローンで購入して借金がある。…など個人の事情や状況に応じて所得税を減らしてもらえるのです。

「所得控除」は利益の額を減らしてくれるもの。「税額控除」は所得控除を加味した上で計算した所得税の額を減らしてくれるものです。

「所得控除」にはどんなものがあるの?

どのような事情があれば、所得税を安くすることができるのか、具体的にみていきましょう。
「所得控除」には「最低限の生活費を考慮するもの」として、a.配偶者控除、b.配偶者特別控除、c.基礎控除、d.扶養控除、e.障害者控除、f..寡婦(寡夫)控除、g.勤労学生控除の7つの控除
特別な現金支出を考慮するもの」として、h.雑損控除、i..医療費控除、j.寄附金控除、k.社会保険料控除、l.小規模企業共済等掛金控除、m.生命保険料控除、n.地震保険料控除の7つの控除があります。

では、具体的にどのようなものか早速確認してみましょう!

a.配偶者控除

結婚している場合、妻又は夫の収入がいくらかチェックしましょう!配偶者(妻又は夫)の給与収入が103万円以下で、あなたの1年間の利益が1,000万円以下の場合、13
控除が受けられるとは、つまりその分の利益をなかったことにしてもらえるということです。
控除額の13~48万円の金額は納税者本人の合計所得金額や配偶者の年齢により異なります。
詳しくは国税庁のホームページでチェックしましょう。

※合計所得金額とは
事業所得(収入から必要経費と青色申告特別控除額をひいたもの)と給与所得(源泉徴収票で「給与所得控除後の金額」)の合計額を言います。
確定申告書の第1表の左側「所得金額」の一番下の行「合計」に記載されている金額です。

b.配偶者特別控除

配偶者の給与収入が201万6千円未満で、あなたの利益が1,000万円以下の場合、1~38万円の控除が受けられます。

c.基礎控除

年齢や所得の多少に関係なく全員一律38万円の控除を受けられます。

d.扶養控除

配偶者以外の親族がいて、その親族の収入が少ない場合(給与収入が103万円以下)、その親族は扶養親族となります。その扶養親族の年齢に応じて0万円~58万円の控除が受けられます。
控除額の0~58万円の金額は扶養親族の年齢や、その親族が70歳以上の場合は同居の有無によって異なります。

例えば、同居している親族が16歳未満の場合、所得控除額は0万円(住民税の計算では考慮されます)
19歳以上23歳未満の場合、所得控除額は63万円(大学など学費でお金がかかる年齢ですね)
70歳以上の場合、所得控除額は48万円か58万円。扶養控除は同居をしていなくても仕送りをしているなど、生計を一にする親族(家賃や水道光熱費や食費などの生活費を一緒のお財布としている家族、以下“お財布が一緒の親族”)であれば扶養控除の対象となります。そして、70歳以上の場合は同居していることによって58万円の控除が受けられるのです。年齢は、その年12月31現在の年齢で判断します
詳しくは国税庁のホームページでチェックしましょう。

ひとことアドバイス

16歳未満の扶養親族は所得税で控除を受けることはできませんが、住民税での控除があります。確定申告書の第二表の「住民税に関する事項」に16歳未満の扶養親族について忘れずに書くようにしましょう。

e.障害者控除

あなた、配偶者控除の対象となる配偶者、扶養親族が障害者の場合、障害の程度等によって27万円~75万円の控除が受けられます。

ひとことアドバイス

障害者手帳の交付を受けていなくても、「要介護認定」を受けていたら「障害者控除対象者認定証書」の発行をお住まいの市区町村で申請しましょう。障害者控除を受けることができます。

f.寡婦(寡夫)控除

配偶者と死別、もしくは離婚後再婚していない場合、寡婦(寡夫)控除を受けられる可能性があります。あなたが男性・女性であるか、扶養親族はいるか、子どもがいるか、利益の額が500万円以下であるかなどによって最大35万円の控除を受けることができます。

g.勤労学生控除

該当する方は少ないと思いますが、特定の学校に通いながら給与をもらっているなど要件にあてはまる場合には27万円の控除が受けられます。
特定の学校とは、大学、高等専門学校、認定職業訓練を行う職業訓練法人で行うものなどで、短期間の資格取得セミナーや各種受講では受けられないことが多いです。該当するか分からない場合は、通学している学校や団体の窓口で確認しましょう。

h.雑損控除

地震や火災などの災害や盗難・横領によって住宅や家財に損害を受けた場合に雑損控除を受けることができます。判定や計算に複雑な部分もあります。この控除の適用を受ける場合には、住宅や家財の購入時期や購入価額、損壊の程度が分かる写真、保険金で補てんされる金額などが分かるものをもって、お近くの税務署や税理士に相談しましょう。
他の所得控除に比べて計算が面倒ではありますが、3年間に渡り所得税が低くなることもあります。

ひとことアドバイス

泥棒が入り現金が盗まれた!という場合も所得税が安くなることもあります、オレオレ詐欺や恐喝で失った現金については雑損控除の適用はありません。盗難もオレオレ詐欺も犯罪に巻き込まれてお金を失っているのに、オレオレ詐欺は雑損控除が受けられないなんて納得がいきにくいですよね。オレオレ詐欺は騙されていたにせよ「自分の意思で」お金を渡したという解釈がされるからなんです。

i.医療費控除

年間で負担した医療費が10万円以上の場合、10万円を超える金額は医療費控除を受けることができます。
10万円に満たない場合はセルフメディケーション税制の適用を受けられるか確認しましょう。セルフメディケーション税制とは、一定の予防接種・健康診査・がん検診のいずれかを受けている場合で、薬局などで医薬品(スイッチOTC医薬品)を1万2千円以上払っている場合は、その超える部分についてセルフメディケーション税制の適用を受けられます。

ひとことアドバイス

①年間で負担した医療費が10万円以上と記載しましたが、所得金額によっては10万円以下でも医療費控除を受けられます。
②医療費控除とセルフメディケーション税制の対象額の合計額が10万円以上18万8千円未満の場合は内容により、どちらの控除を受けた方がお得か異なります。有利な選択をしましょう。
③あなたにかかったの医療費だけでなくお財布が一緒の親族の医療費も医療費控除の対象となります。お財布が一緒の親族に所得要件はないので、より所得が大きい納税者で医療費控除を検討した方が世帯で負担する所得税が低くなります。

j.寄附金控除

公益性の高い寄付をした場合には、その寄附金の額から2千円を引いた額が寄附金控除の対象となります。寄付金の額が大きい場合は一定の額以上は寄付金控除の対象とならないので注意しましょう。
対象となる寄附金とそうでない寄附金があるので、一つ一つ確認しましょう。割と耳にするふるさと納税はここに入ります。

ひとことアドバイス

①確定申告書の第二表の「住民税に関する事項」の「寄附金税額控除」の欄にも金額を記載するのを忘れないようにしましょう。ふるさと納税の場合は「都道府県市区町村に対する寄附金」の欄に金額を記載します。記入箇所が小さくて見つけにくいので注意が必要です。
②ふるさと納税とは自分の故郷や応援したい自治体に寄附をすることです。ふるさと納税をした金額によって所得税や住民税の控除や還付を受けることができ、さらにその地域の名産品などを受け取ることができる制度です。
ふるさと納税による所得税や住民税の還付は限度があるので、1年間の利益をもとに控除となる限度額を把握してからふるさと納税をするようにしましょう。

k.社会保険料控除

社会保険料(健康保険・国民健康保険・介護保険・国民年金・厚生年金など)を支払った場合には年度に関係なくその全額が支払った年において控除をうけることができます。

ひとことアドバイス

お財布が一緒の家族の社会保険料を支払った場合も社会保険料控除の対象となります。お財布が一緒の家族に所得要件はないので、より所得が大きい納税者が対象となる家族の社会保険料の支払をしていれば世帯で負担する所得税が低くなります。

l.小規模企業共済等掛金控除

小規模企業共済や個人型確定拠出年金(の掛金を支払った場合には、その全額が支払った年において控除されます。

ひとことアドバイス

①小規模企業共済や、イデコとは支払った掛金の全額の控除を受けることができ、また払い込んだ共済金や運用した資産の受け取るときにも税制上のメリットを受けることができます。節税策として利用されることも多い制度です。

m.生命保険料控除

生命保険契約の保険料を支払った場合には、最大12万円が生命保険料控除として控除されます。契約日や契約内容により計算が異なるので、保険会社から送られてくる「控除証明書」をもとに計算しましょう。

ひとことアドバイス

①支払った生命保険料の全額が所得控除の対象となるわけではありません。節税のために生命保険に加入しても控除される金額は一部なので注意しましょう。
②条件を満たせば、お財布が別の家族の支払をした場合もこの控除を受けることができます。

n.地震保険料控除

損害保険契約のうち地震保険料を支払った場合には最大5万円の控除が受けられます。

「税額控除」にはどんなものがあるの?

税額控除には代表的なものに「寄附金特別控除」「住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)」の2つがあります。

①寄附金税額控除とは

政党・政治資金団体、認定NPO法人等、公益社団法人等に対する寄附をした場合には所得控除(前述のj.寄附金控除)の代わりに寄附金特別控除(税額控除)を受けることもできます。所得控除(寄附金控除)を受けた場合と税額控除(寄附金税額控除)を受けた場合を計算し、有利なほうを選びましょう。

e-taxで確定申告書を作成する場合、自動でどちらが有利かを判定してくれます。

②ローン控除とは

ローンを組んでマイホームを買った場合には、10年間で最大400万円の住宅ローン控除を受けることができます。バリアフリーや耐震構造への改築などでも控除を受けられます。

いかがでしたか。知っているか知らないかで所得税・住民税が大きく変わってきます。最初は調べるのは大変かと思いますが、一度知ってしまえば次からは楽になります。分からないことがあれば税務署などに電話して聞きましょう。

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